Kendrick Lamar 「Bitch, Don't Kill My Vibe」 のコード進行
ケンドリック・ラマーの「Bitch, Don't Kill My Vibe」のコード進行を分析したいと思います。載せてるコードは基本的に耳コピです。
心の中を覗いてみなよーそんなもの存在しないってことがわかるから
ケンドリックの2nd『good kid, m.A.A.d city』(2012年)の2曲目に収録。
シングルカットもされています。
「Bitch, Don't Kill My Vibe」のコード進行
[Verse, Hook, Brdige すべて]
| Fm7 | Db△7 | (繰り返し)
※2小節目のDb△7は食って入ります
コード進行の分析
それでは中身をみていきましょう。
キーはFmです。
コードをディグリーネームで表すと | Im7 | bVI△7 | の繰り返し。
機能的にはトニックマイナー(Tm)→サブドミナント・マイナー(SDm)のループですね。ドミナント(D)がでてこないことがわかります。
もう少しミクロに寄ります。
2つのコードの構成音をみてみると、Fm(F Ab C Eb)と Db△7(Db F Ab C)。
つまり、1音を除いてすべての構成音を共有していることがわかります。
有り体に言えばほぼ同じコードが2つ並んでいる。
確かに、コードの変化に伴う情景の変化はそれほど大きくないように聞こえます。
フックのメロディーに目を向けると、すべてFマイナーペンタトニックで構成されています。
また、Db△7の部分では、メロディーがDb△7の9thや13thを鳴らしていることから、コードに沿ってメロディーを作ったわけではないことがわかります。
でも、
これって、コードが進行していますか?
モードで考える
コードが進行するためにはトライトーンの解決が必要です。
ドミナントがなければそもそも進行することすらできません。
そして、それゆえにモードは原理的にクールなのです。
この曲には不協和音がありません。
つまり、コード進行がありません。
では、モードで考えてみましょう。
コード進行することができないこの曲を。
モーダル目線でみると、すぐにFエオリアン一発であることがわかると思います。
FエオリアンのルートコードはFmです。
また、Fエオリアンの特性音はDb。
そのDbをルートに持つコード、プライマリーコードであるDb△7をFmと併せてプレゼンテーションしている。
つまり、この曲は典型的なFエオリアンの曲なのです。
曲を通して流れる、重さと湿度をまとった空気感。
その正体はエオリアン特有の「モード」にあったのです。
まとめ
コード進行を分析した結果、この曲はコード進行を基にした、ケーデンシャルな曲ではなく、モーダルな曲であることがわかりました。
サンプリング元
Boom Clap Bachelors 「Tiden Flyver」
サンプリングの元ネタ。デンマークのバンドみたいです。
「Bitch~」よりキーが半音低い。