C.O.S.A. × KID FRESINO 「LOVE」のコード進行
今回はC.O.S.A. × KID FRESINO 「LOVE」のコード進行を分析します。なお、載せているコードは耳コピです。
What love is またひとつ浮かんだ ー What love is またひとつ消えた
C.O.S.A. × KID FRESINO『Somewhere』(2017年)の2曲目です。
プロデュースはFla$hBackSのjjj。
「LOVE」のコード進行
[Intro]
| B△7 A#7 | D#m7 F#7 |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | B/C# |
[Verse1]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
[Chorus1]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 B/C# |
[Verse2]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 B/C# |
[Chorus2]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
[Verse3]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 B/C# |
[Chorus3]
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
コード進行の分析
さっそく中身を見ていきましょう。
まず今回はコード進行の表が長いうえに#が多くて見づらいですね。すいません。
「Bitch, Don't Kill My Vibe」のときなんか2行だったのに。
なんでこんなに#が多くなってしまったのでしょうか。
そうです。キーがF#だからですね。
長々とコード進行を書きましたが、基本的なループは
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# |
と
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 F#7/A# |
なのがぱっと見でもわかるのではないでしょうか。これの語尾がときどきB/C#になったり、という感じですね。
オンコードが2つでてきますが、B/C#はC#7のことで、F#7/A#はF#7の転回形です。
ディグリー表記だと
ループ①
| IV△7 IIIm7 | IIm7 V7 | IV△7 IIm7 | IIm7 I7 |
ループ②
| IV△7 III7 | VIm7 V7 | IV△7 IIIm7 | IIm7 I7 |
になりますね。
まず、ループ①のほうは、ファ・ミ・レと降りてきて次への繋がりを予感させるドミナントで終わる、というのが基本的な構造になっています。
この辺は「東京23時」のコード進行と似た甘さ・切なさを感じる所以と言えましょうか。
ここでファ・ミ・レ以外に登場するドミナントも、ダイアトニック環境内のV7か次のコード(IV△7)へのドミナントであるI7と、割とシンプルな構造です。
次にループ②です。
ループ①と違うのは前半の4つのコード進行のみで、ループ①が「ファ・ミ・レ」と下がっていくのに対して、2つめと3つめのコードが、それぞれ平行短調であるD#m7(VIm7)とそこへのドミナント(III7)になっています。
実はこの進行もある意味テンプレというか、よくあるコード進行です。
R&Bで王道といえるコード進行なのですが、数多あるR&B王道進行の中でも、特にJ-POPで人気の高いコード進行になります。
J-POPでの使用例は、パッと思いつくだけでも椎名林檎の丸サ
とか、
他にも「今夜はブギーバック」「決戦は金曜日」「COSMIC BOX」など、枚挙にいとまがありません。
ちょっと洒落な雰囲気の曲が多いのが目立った特徴でしょうか。
そして今回の「LOVE」もそんな系譜に連なる1曲といえるのかもしれません。
なぜ長い
ところで、どうして今回のコード進行の表はこんなに長いのでしょうか。
上で見たとおり特段コード進行のパターンが多いというわけではありません。
え、じゃあ何なの、という皆さま。
なんとこの曲、驚くべきことにヴァースとサビのコード進行が毎回違っているのです。
普通は曲の1番と2番のコード進行って歌詞は違えどだいたい同じで、ましてやヒップホップなんてその傾向が強いのですが、今回ばかりはそうは問屋が卸さない。
その結果、通常は繰り返し表記で済んでしまうところを、長大な表になったというわけです。
でも、パターンが多いわけではないのに、なぜ毎回コード進行が異なることになるのか。
解説します。
これは、もともとのトラックは
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# | × 3回
| B△7 A#7 | D#m7 B/C# | B△7 A#m7 | Gm7 F#7/A# | × 1回
でループしていたのですが、そのイントロが
| B△7 A#m7 | G#m7 B/C# | B△7 A#m7 | G#m7 F#7/A# | × 2回
の段階でC.O.S.Aのヴァースに入ったため、結果として2ループずつ押し出され、このようにトリッキーな進行になったものと思われます。
つまり意図したものではなく、あくまで結果としてこうなったのではないでしょうか。
ですが、その上でヴァースとサビの切り替えとなる箇所、句読点となる部分では微妙にトラックを調整しているので、基本的なループの語尾がときどき変化しているというわけです。
ここから、ただループさせてトラック一丁あがり、というわけではなく、丁寧に細部を仕上げているということも見てとれます。
まとめ
今回はコード進行の分析によって、曲の持つ甘切なさとアーバンなフィーリングの源泉を発見するのみならず、トラックの周期とラップの周期にズレがあることを認識することができました。
こうして、ただ陶然と聴いているだけではなかなか気づかない構造が見やすくなるというのも、コード進行を分析したことによる副産物といえるのではないでしょうか。
サンプリング元
Todd Rundgren 「Marlene」
サンプリングの元ネタです。
トッド・ラングレンの名盤から。割と大ネタ使いといえるでしょうか。
ちなみに原曲はキーがFです。